iPhone 5デビュー直前だけど問題山積?供給不足、消費者ニーズの変化、対グーグル問題
もしあなたがアップルの新iPhone のために手持ちのスマートフォンを手放そうとしている多くの人々の一人であるなら、出来るかぎり早目に先行予約をする方がよいでしょう。というのも、iPhone 5の供給に問題が発生する可能性が出ているからです。米国のCOMPUTERWORLDに、アップル専門家のジョニー・エバンス氏が寄稿しております。
シャープの問題アップル新機種への期待は破裂しそうなほど膨らんでいますが、日本のエレクトロニクスメーカーであるシャープにおいては、新iPhone用ディスプレイの生産スケジュールに遅延が出ている模様です。
シャープはロイターの報道によると、iPhone 5が店舗に並ぶまであと数週という時点で、同デバイス用ディスプレイの生産に遅れを取りつつあります。アップルはシャープの他にも、LGや日本ディスプレイからもスクリーンを納品することになっていますが、シャープの生産の遅れは問題となる可能性大です。
新4インチスクリーンは、インセル式パネル技術を採用し、これまで以上に薄板化すると見られています。同技術では、スクリーンの上層に一層置くのではなく、ディスプレイ自体にタッチセンサーか組み込まれます。
シャープは今年前半から、同技術を用いたスクリーンの生産を行っていますが、生産を拡大するのに支障が出ている様子。このためシャープは悪戦苦闘中で、生産自体が高コストでもあり利益にも影響必至と、ロイターは報じています。
シャープを取りまく環境はシビアです。以前から懸案だった鴻海精密工業/フォックスコンとの提携にも不確定要素が多く、同社が工場に大型投資するのにも準備が足りていない状況です。シャープ製iPhoneディスプレイ生産ラインに関しては、将来の供給を確保するために、アップルは助成を余儀なくされるかもしれません。
供給不足の懸念iPhoneリリース直後の供給に制約が出ることは、驚くことではありません。iPhoneのリリースでは、毎度の出来事です。第1世代iPhoneは、最初の100万台を売るのに1四半期を要しました。以下は、各世代のiPhoneの最初の売上のまとめです。
・iPhone 4S:最初の一週間で400万台超え
・iPhone 4:最初の一週間で170万台超え
・iPhone 3GS:最初の一週間で100万台超え
・iPhone 3G:最初の一週間で100万台到達
これらの記録的な売上は、iPhoneリリースにともなう大々的な広告や熱狂と組み合わさったものでした。しかし直近四半期のスマホの売上は、相対的に成長鈍化しており、業界関係者らはiPhoneの最初の一週間の売上に注目しています。Changewaveは7月の調査で、iPhoneへの需要は「これまでのiPhoneモデルに見られたものを大きく超える」としました。
「これまでで最大のiPhoneリリースとなるだろう。製品のリリースとしても最大となるかもしれない」と、Robert Bairdの上級アナリストであるウィリアム・パワー氏はBloombergで述べました。
アップルもハードルを高く設定しています。アップルのマーケティング担当上級副社長であるフィル・シラー氏は、各世代のiPhoneは、その先代iPhoneの売上すべてを合わせたものとほぼ同じ台数を売上げていると語りました。
アナリストのホラス・デデュー氏は、この意味において、iPhone 5は来年にかけて1億7000万台を売り上げると見ており、かなり強気の予測です。
構成部品の供給で、アップルに影響はあるのか?生産のキャパシティが制約を受けるとなると、構成部品の出荷の遅れによって、アップルが需要を満たす上で、大きな影響が及びます。
アップルとGoogleのアンドロイドOSとのプラットフォームをめぐる争いは、iOSの売上がやや平板化しているところに現れています。iOSスマホの売上は現在、市場の20%を占めており、他方GoogleのOSは60%を超えています(Statista/Gartner調べ)。
このようなことは、アップルに対して、よりスリムで薄く小さいiPhone 5を大量に売上げねばならないプレッシャーとなっています。よって、構成部品の生産の遅れなどという供給上の問題にかまけている暇はありません。
米国のスマホ使用者は2016年までに、1億9240万人に達する見込み(eMarketer調べ)。どのプレイヤーたちも、ここから出来るかぎり多くのセールスを奪いたいと躍起になっています。J.P. Morganのアナリストであるマーク・モスコウィッツ氏は、新iPhoneが2013年の最有力スマホになると述べています。
アップル対Googleの代理スマートフォン戦争は、日増しに複雑化しています。訴訟沙汰などでは、とても顧客がデバイスを買いたいという誘引にはなりません。漁夫の利のならわしで、マイクロソフトがシェアを奪うきっかけを与えることにもなりかねません。法的闘争のせいで、ますます人々はプラットフォームを「党派的に選択する」ようになってしまいます。
このような論争の醜さは、アップルの名声をおとしめるものです(ウェブ上に見られる、アンドロイドファンによる、反アンドロイド的コメントに対する有無を言わさぬ個人攻撃について、エバンス氏は懸念を示しています)。
変わりつつあるビジネスこれらのことは、消費者の行動上の奇妙な変化につながっていきます。例えば、31日に公開された英国YouGov BrandIndexのレポートによると、過去1ヶ月の間に、全体的な人気、「値打ち」及び「お奨め」というカテゴリーで、iPadがiPhoneを超えたという結果が出ました。
「iPadがiPhoneを超えて評価されたのは、これまで見られたパターンの逆転だ。2012年初め以前は、全カテゴリーでフォンがタブレットを上回っていた」と、同レポート。
アップル社幹部は、同社旗艦モデルのスマホについて、英国の人々の受け止め方に翳りが出ていることに驚きを隠せないかもしれません。英国の消費者は、今年初めほどには同機を「お奨め」しない傾向になりつつあります。一方、良いニュースとしては、iPadの好印象が大きく向上したことです。10月にはiPad miniの登場も控えています。
iPhoneへの興味が薄らぐようなことになれば、それは大変なこと。万が一、最初の四半期中iPhone 5の需要に影響が及ぶとなれば、アップルは大きな問題に直面することになります。この問題は、さらなる訴訟沙汰ともなりかねない対Googleの問題です。
Googleとの和平このような環境下、アップルのティム・クックとGoogleのラリー・ペイジの間で、水面下の交渉が始まっているとしても、それは意外でも何でもありません。なにがしかの和平への序曲となることを多くの人々が望んでいますが、この交渉が、同2社間が全面衝突する嵐の前の静けさといった礼儀ある話し合いでしかない可能性もないわけではありません。
敵意をむき出しにするのは、恥さらしです。どんな将軍も、戦争は資源と生命の浪費でしかないことを知っています。他にどんな解決策もない時に限って、戦争は開始されます。アップルファン、アンドロイドファンともに共通している問いかけは、「誰が正しいのか?」ではなく「争いを解決する思慮ある方法は?」です。
この争いを終わらせるためにクロスライセンス契約が結ばれることを、誰もが期待しています。このために今こそ、すべての関係者が、解決にむけた議論に関与することは価値あることです。後回しはよくありません。あとあと法的闘争に巨額の浪費をするぐらいなら、今こそ、スマートフォンを待ち望んでいる多くの人々のためにも、解決にむけた投資をすべきです。
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