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アップル、指紋認証支払い技術で前人未到の進歩を遂げる

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ニューヨーク市長のマイク・ブルームバーグ氏は先週、公共の住宅施設に指紋認証ベースの鍵を採用すると提案し、同市長の座を狙う反対派から大ブーイングを受けました。指紋認証というアイディアは人畜無害に見えて、そのじつ、大きな反響を呼ぶもののようです。他方、ハイテク関連の世界では、次期iPhoneに指紋認証スキャナーが搭載されるという噂でもちきり。米国のForbesが伝えております。

さて問題とは?新iPhoneの指紋認証スキャナーは、本当に使い物になるのか...。単なるギミックに終わり、あと一年もすれば誰も使わなくなり忘れられてしまうような代物なのか、はたまた、今後数世紀にわたって使われることになるような、新世紀を告げる革命的特徴なのか。

欧米社会における指紋認証
米国で指紋認証は多くの分野で使われています。しかし指紋認証という言葉をもっともよく耳にするのは、刑事・犯罪に関する分野です。政府関係者、財務関連の業務に関わる人、「アクセス制限」の情報にアクセスする人はみな、指紋を取られます。軍関係者、自治体関係者も指紋を取られます。養子をもらう人、グリーンカード(外国人に発行する永住ビザ)をもらう人、市民権を得ようとする人も指紋を取られます。

WindowsベースのPCの中には、指紋認証スキャナーを内蔵して10年近くになるものもあります。銀行や政府機関へ入るドアには、指紋認証スキャナーを備えるドアロックがますます普通になってきています。しかし大半のアメリカ人は、指紋認証に抵抗感を持っているのではないでしょうか。なぜならそれは、国家による個人の身元証明の巨大データベースの蓄積につながるからです。(もちろんこれは社会保障の行使には大変好都合です。雇用主、銀行、住宅ローン業者への情報が、いつでもどこでも得られる利点があります。)

対照的に、米国外では、指紋を取られることが当たり前という場合もあります。例えばヨーロッパの市民がパスポートを申請しようとすると、申請時には10本指全部の指紋を取られます。そしてその情報はチップに記録され、パスポートのカバー内に格納されます(この情報は、米国を含むあらゆる国々で、出入国審査に際して使われます)。これは先進国のほとんどの身分証明書にも当てはまることです。

次期iPhoneに指紋認証センサーが導入されることは、アメリカ人を憤慨させるかもしれませんが、同時に有用な特徴でもあるわけです。中国秦朝の時代(紀元前200年頃)には、粘土でできた版に指紋を押して、公文書の管理や盗難の捜査に役立てられていました。しかし西洋では、19世紀になってようやく指紋認証が使い始められましたが、そのほとんどが刑事上がらみの目的です。

アメリカ国外では2000年初頭より、指紋認証が、刑事上の目的以外から使用されることが多くなってきました。例えばイギリスでは、学童が指紋を取られます。指紋をデジタル化して、学校図書館の本の貸し出し、授業の出席欠席、給食の支払いなどに役立てられています。

指紋認証革命が始まる
アップルは昨年、3億5000万米ドル(約341億円)で、指紋認証技術の先駆者であるAuthentec社を買収。アップルが指紋認証に並々ならぬ興味を抱いていることが明らかとなりました。このAuthentec社は、ニュースなどでよく見聞きするタイプの企業ではありません。その理由は、同社技術の大半が、他社のデバイス内に埋め込まれているからです。実際、買収当時、Authentec社は、レノボやサムスンのラップトップPCの指紋認証スキャナーを支える技術を提供していました。しかしながら、これらは一年も経つと、その生産ラインから消滅しました。Authentec社は、同社のセキュリティーサービスのすべてを、モバイルデバイス向けに切り替えようとする過程にありました。サムスンはそんな大口顧客のうちの一社でした。

アップルもまた他社同様に、同技術をデバイス内に含み入れるための特許を取ることができたかもしれません。しかしアップルは、同技術を、買収した方がいいものだと考えたようでした(アップルがSiriのために、Nuance社の技術の特許を取ったやり方と対照的です)。このアップルのAuthentec買収によって、アップル競合他社による指紋認証スキャナー技術の採用がきれいさっぱり消えてしまいました。これは、この買収劇が、同技術に関する特許上の同意において、アップルが強引と言ってもいい?終止符を打ったということを示しています。

それにしても何故アップルは、それほど見通しの明るくない技術を買うことにしたのでしょうか?そこはやはり先駆者アップルの面目躍如といったところで、ものの見方が他社とは違うわけです。その先見の明はいずれ、消費者らを納得させることになるでしょう。膨大なクレジットカードという宝の山はデジタルの金鉱です。この支払いデータに関して新たな革命を起こすのに必要なことは、すべてのユーザーをシンプルな方法で識別する方法を見つけることです。指紋認証技術は、すでに一世紀以上にもわたり、その種の技術として定評を得ています。次世代の電子デバイス身元認証管理の鍵は、指紋認証技術にあるのかもしれません。アップルはそこに大きな賭けに出たわけです。

例えば自分のiPadを起動する場合を想像してみましょう。スクリーン底部のボタンを押します。しかし今後、事態は変わってきます。あなたのガールフレンドや妻がそこにインストールしたアプリは、もう現れません。あなたの子どもがダウンロードしたゲームも出てきません。そこはあなただけの空間となります。そこはあなたの指紋に紐付けられた空間です。しかし一方で、子どもには子どもの空間が、その指紋によって保証されています。たった一つの指紋に結びついた単一の空間が、デスクトップ上に現前するのです。

もう一歩進んでみましょう。例えばスターバックスのような店にフォンを持っていきます。店の登録(レジスター)は、あなたのiPhone(すでにアプリがあります)に結び付けられています。なので、支払い時は、指紋認証スキャナーを押すだけでいいのです。あなたのデータはID証明とともに認証され、クレジットの支払い明細に記載されます。このような支払いに関するソリューションで、アップルはお金の取り扱いに革命を起こすのかもしれません。

Airdropを使えば、指紋認証スキャナーは、あなたのデバイスから友人のデバイスに送金する装置ともなり得ます。レストランで割り勘をする時など便利です。現金はもう不要です。あなたのクレジットカード情報をすでに持っているアップルのiWalletが、あなたの支払いすべての面倒を見てくれます。

アップルストアに入って、新デバイスを買ってみましょう。まずクレジットカードを、従業員に渡して、モバイル決済端末のVerifoneにてスワイプしてもらいましょう。

翌日、あなたは指紋データを送るのにボタンを押すだけで、アップルのサーバー上では、あなたの身元が認証されます。NFCチップももう要りません。クレジットカードも要りません。指一本あれば十分なのです。

もしこのような使用形態をアップルが提供してくれるなら、それは革命的なこと。次世代の支払い方法と身元認証ツールにおいて、大きな一歩を踏み出すことになります(モトローラは2011年、Motorola Atrixフォンにおいて、指紋認証スキャナーを搭載しようとしましたが、それは信頼性に欠け、ほとんど使われることがありませんでした)。この進歩により、セキュリティーが飛躍的に向上します。フォンをアンロックするのに、パスワードではなく指紋を使います。一般的な身分証明においても、あなたのフォンが認証済みのIDとして使用されます。企業は、もっぱら指紋認証を中心として、巨大なデータベースを構築するようになるでしょう。

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