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スティーブ・ジョブズは如何にしてテクノロジーを「宗教」に変えたのか

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スティーブ・ジョブズは如何にしてテクノロジーを「宗教」に変えたのか?米国のLos Angeles Timesが伝えています。

アップル草創期から幾星霜、その製品を愛する人々の様子がまるで「カルト」のようだとはよく言われていることです。アップル信者は、その製品に熱狂的な忠誠心を抱いており、これは競合他社の羨望の的。

アップルに従う信者のもつ宗教的な熱意は、偶然に生まれたものではありません。米インディアナ州にあるノートルダム大学ビジネスカレッジの客員教授であるブレット・ロビンソン氏(マーケティング専攻)は、その新著『Appletopia』で、いかにスティーブ・ジョブズが宗教的なメタファー(隠喩)とイコノグラフィー(図像)を用いて、その製品と技術を一種の宗教にまで高めたかを検証しています。同氏の新著は、大学で宗教、ハイテク技術、マーケティングを大学で講じている氏の書いた論文から生まれたものです。

「アップルの技術をめぐるレトリック(修辞)は、宗教的なメタファーを好む。アップル側からしても、意識的な部分もあれば、無意識的な部分もある」と、ロビンソン氏。

ジョブズはよく知られているように、禅宗を含む東洋のスピリチュアリズム(精神性)の熱心な信奉者でした。ジョブズは知識と意識変容体験の探求者で、広く世界を旅行し、LSDを使って自身の意識を拡大しようとしました。

ロビンソン氏によると、アップルはその黎明期から、「精神性」を同社の哲学に据えてマーケティングを展開してきました。それまでコンピューターを冷厳な計算をするだけの魂のない大きな箱と見てきた人々の意識を変えようとしました。

アップルが借用した宗教的なイコノグラフィーは、ほとんどそれと分からない微妙なものです。例えば、そのロゴ。ひと齧りしたリンゴのイメージは、「エデンの園」や「知恵の樹」を彷彿とさせます。

しかしアップルの教義において、「知恵」は没落をもたらすものではなく、むしろ自由を与えて啓蒙への道を開くものです。

「啓蒙」は大切な要素だと、ロビンソン氏は言います。アップルの有名な「1984スーパーボール」のコマーシャルでは、一人の女性ランナーがハンマーを投げ放ち、巨大スクリーンに映し出されたジョージ・オーウェルの小説に出てきそうな人物の姿を砕き割ります。そして強烈な光をともなう爆発が起こり、囚人のような労働者らが明るい光を浴びて覚醒し、どよめきます。

ジョブズの天才性とは、コンピューターと技術が人間の為にあることを常に理解していたことにあります。特徴やスペックではなく、そのガジェットが何をもたらし、どのように人々の生活を変えるか。それが大切なのだということをジョブズは確信していました。だからこそMacは、人々に現実を超えた神秘的な体験をもたらす何かとなり得たのです。

最初のマッキントッシュが生まれる前、ジョブズがマーケティング部長のマイク・マーレイと交わした会話に、ロビンソン氏は触れています。

ジョブズ 「スペックや特徴、RAM、性能表、機能比較を宣伝するようなことはしない。われわれに残された手段は、感情に訴えることだ」

マーレイ 「じゃあそれは、カルト製品になるんだね」

ジョブズ 「そうだ、カルトだよ。そうすれば、みんな無批判に何にでも従ってくれるよ」

アップルは、自社製品を開発者や顧客に広めるために、「エバンジェリスト(伝道者)」を雇うことすら始めました。後にジョブズがアップルに復帰したことも、宗教的な暗示をもって語られるようになりました(アップルは「(キリストが)復活した」とか「死から蘇生した」など)。

さて、新iPhoneリリース間近の昨今、アップル信者はさらに増えるのでしょうか...。

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