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iPhone 対 Android: あなたの宗教を選ぶとき

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スマートフォンが世に登場して以来、まだ数年の月日しか流れていませんが、すでに我々の生活の隅々にまで多大な影響を及ぼしています。iPhoneを選ぶのかそれともAndroidフォンを選ぶのか。それは、その後の日常生活において、決定的な意味合いを持つことになります。

米国のハイテク情報サイトThe Vergeのレポーター、ブラッド・サボブ氏は、「iPhone or Android: it's time to choose your religion(iPhone 対 Android: あなたの宗教を選ぶとき)」と題して、互いに牽制し合う両陣営のエコシステムを論評しています。

グーグルにとってもアップルにとっても、自社のモバイルOSに新しい機能を導入すれば、それが瞬時に他方の製品と比較されることはもはや避けられません。全く新しいバージョンであっても同じです。どちらの通知機能がより優れているか、どちらのマルチタスク機能がよりスマートかといった加熱する議論に、さらに油を注ぐ言葉を、両社のトップが率直に口にしています。

グーグルは26日(米国時間)にAndroid Lを公開しましたが、Android責任者であるサンダー・ピチャイ氏はその席上で、iOS 8のカスタムキーボードとウィジェットについて、「(そのような機能は)Androidには4~5年前からある」と揶揄しました。一方アップルのCEOティム・クック氏も3週間前にこんなことを言っています。

「当社の(新規)顧客の多くはAndroidからの乗り換え組だ。彼らはAndroidフォンを"誤って"購入した。そしてその後、もっと良い経験を求めた。もっと良い人生も」。

アップルとグーグルは互いをライバルと認めていますが、両社のモバイルプラットフォームは、実際のところ、違いよりも類似性の方が増しています。アップルはiOSとOS Xとの「コンティニュイティ(連続性)」を維持し、グーグルもAndroidとChrome OSとの通知機能を同期しています。

アップルのHealthKitは、グーグルでいえばGoogle Fitです。両社のゴールは同じなのです。そのゴールとは、ユーザーをつなぎとめる、ハードウエア、サービス、アプリから成る包括的エコシステムを構築することです。

ユーザーが2度と離れないエコシステムを構築する

所有するすべてのガジェットが互いに高度に連携すれば、人生は確実に、これまで以上に素晴らしくなるでしょう。しかしそこにたどり着くには、ユーザーはまず、自分のロイヤルティのありかを決定しなければなりません。

AndroidとiOSはともに今秋、ここ数年で最大といわれるアップデートを控えているため、両者の執念的な比較がこれまで以上に激しくなることは確実です。スマートフォンの選択は、タブレット、テレビ、自動車、腕時計、そしてフィットネス・トラッカーといった他の製品の選択をも決定づけていくことになります。

グーグルは、26日に開催した「Google I/O 2014」の基調講演で、あらゆる種類およびサイズのデバイスを横断する、包括的で統一的な体験を提供するという壮大な計画を発表しました。まぎれもなくAndroidフォンのハブとしての機能のことです。新しいスマートウォッチAndroid Wearは、数多くの優れた機能を実行しますが、そのほとんどはAndroidフォンとの接続に依存しています。

もし手首をたたいてピザを注文したいのであれば、ユーザーはグーグルのエコシステムの中に入っていなければなりません。今年中にソニーとシャープのテレビに搭載されると発表されたAndroid TVも、その機能を最大限活用したいユーザーは、Androidフォンを購入しようと考えるでしょう。グーグルのサービス範囲が拡大すればするほど、その全ては、究極的にAndroidフォンにつながっていきます。Androidフォンは、グーグルが構築しているエコシステムの心臓部なのです。

アップルも同様に野心的です。iOS 8は、写真を同期するだけでなく、デバイス間を横断して編集することも可能にします。アップルはiPhoneを軸に、HomeKitでは家全体を制御し、HealthKitではユーザーの主治医的役割を果たすことを望んでいます。

Apple TVとAirPlayは、Android TVに想定されるインタラクティブ性の多くをすでに実現しており、CarPlayは、Android Autoに対するAndroidフォンの役割と同様の方法で、iPhoneの影響力を拡大させます。これら類似したアプローチはすべて、スマートフォンという不可欠なハブに繰返し戻って行くためのスポークなのです。

スマートフォンが中心であり続ける

アマゾンは、ウェブベースの幅広いエコシステムで、スマートフォンが固定具として機能するというこの力学をすでに認識しており、つい最近Fire Phoneを発表しました。マイクロソフトも、地位の確立した製品に代わる、信頼のおけるWindows Phoneを作ることに挑み続けています。ユーザーが最初に選択したスマートフォンは、彼らがその後に行う決定の多く、例えば音楽ストリーミングやクラウドストレージ、写真共有サービスの選択に影響を及ぼします。

従って企業にとっては、ユーザーが最初に選択するデバイスに自社のソフトウエアが使われていることが、最重要事項となってきました。グーグルの低価格製品Android Oneのプラットフォームは、発展途上市場で、新規参入のスマートフォンが狙うゴールを正確に達成することを目論んでいます。

アップルとグーグルが現在構築しているものは、ナイキやアディダスなどあらゆるファッションブランドが手にしたいと望んだもの、つまり、1つの企業から必要なものをすべて手に入れさせるための、確固たる動機です。ブランドへの忠誠心は、愛着以上に、実用性に基づくものなのです。

iOS 8は、ある程度期待が持てます。例えばウィジェット、ロック画面でのインタラクティブ通知、プラットフォームのサードパーティへの開放といった基本要素がAndroidに追いつきます。Androidも、美観と反応性のギャップを埋める新しいイテレーションを、ますます洗練し改良しています。

2つのOSの基本機能はほぼ同等であり、いまや、両者を際立たせ、人々にいずれかを選択するよう迫る要素は、基本機能から離れた場所に存在しているのです。両者の間を行き来することは難しくなるでしょう。しかしiOSとAndroidは、全力を注いでこの無意味なことを行っています。

グーグルもアップルも壁に囲まれた相手の庭に興味がない

理想は、トップが互いに皮肉を言い合うのではなく、両方のプラットフォームとの相互運用性がある、グローバルなエコシステムが1つ生まれることです。それがなくても、ナイキや、グーグルが所有する(しかし独立して運営されている)Nestに、わずかな希望の芽はあります。Nestは、同社のLearning Thermostat向けアプリを作成するために、ソフトウエア開発を開始したばかりです。ナイキは今後、同社のFuelのポイントを、Google FitとHealthKitの双方のユーザーに利用できるようにしていくとしています。

これまで、iOSとAndroidのメジャーアップデートは常に異なる時期に行われ、異なるテーマに焦点が当てられてきたため、直接の比較はあまり意味がありませんでした。しかし今年は時期が重なるだけでなく、自動車や健康関連、家、ウェアラブルデバイスへのサービス拡大や、あらゆるデバイスを横断したユーザー体験の統一化など、テーマも同じです。そこで両者の違いが鮮明にあらわれれば、これまで以上にユーザーの選択に影響を及ぼすはずです。

ユーザーが次に購入するスマートフォンはせいぜい数年で買い替えられるかもしれませんが、そこで使用されるエコシステムは、これまで以上に長くユーザーをつなぎとめることになるでしょう。

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